松のこも巻き


冬の観光地や日本庭園で、松の幹に藁が巻かれているのを見たことがあると思います。

「菰巻き」といって、マツカレハの幼虫の習性を利用して菰の中に誘導して越冬させ、春になったら、菰を外して虫ともども焼いてしまう、薬剤を使わない害虫駆除法です。

マツカレハの幼虫はトゲを持っていて、トゲにある毒液で敵を攻撃します。
松や竹、笹の葉にいる幼虫に誤って触ってしまいトゲに刺されると、毒液によって患部の激しいかゆみやじん麻疹のような症状がでます。かゆみは長いと3週間程続きます。
このことから、マツカレハの幼虫は害虫とされ、菰巻きによって駆除されてきました。
また、マツカレハは成虫になると無害になるため、駆除対象となるのは幼虫のみです。

マツカレハの幼虫は松などの葉を食べて成長します。秋から冬にかけては松の根や葉の下など暖かい場所で越冬します。
このとき、松に菰が巻いてあると、マツカレハは根や葉の下ではなく菰の中に入り越冬。
春を迎えると、マツカレハの幼虫入りの菰を外して燃やすのです。

ところが、近年の研究で実際に菰の中で冬を越していたのは、マツカレハの幼虫ではなくヤニサシガメなど益虫であることが判明したのです。

さらに、菰の中で越冬していると思われていたマツカレハの幼虫は、菰よりもその内側…幹の割れ目のすき間に残っていることが多いことがわかりました。

そのため、多くの自治体や観光地で現在菰巻きは行われていません。

一方、恒例の行事として菰巻きを続けている所もあります。

岡山後楽園では、今年も園内の240本の全ての松の木の菰巻きを無事に完了しました。

伝統行事を継承すると同時に、訪れる人々が楽しみにしている冬の風物詩を守るためです。

その思いは、菰を固定するための縄の結び目が全て歩道側を向いていることからも窺えます。

菰が巻かれた木々の姿は、ニナファームジャポンがある銀座では見られない風景です。
菰巻きが見られた時には日本の風物詩として楽しみましょう。

ただ・・・春の「菰焼き」はどうするのか、個人的には気になります。

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