水分不足は老化を招く
体内の水分の役割
私たちの身体は、成人では体重の約60%が水分で満たされています。たとえば体重が60kgの人であれば、36kgが水分ということになります。このように身体の多くを占める水分は、一体どのような役割を担っているのでしょうか。
まず体内の水分は、細胞内液と細胞外液の2種類に分類されます。一つ目の細胞内液は、身体を構成する約60兆個すべての細胞の中に存在し、体内水分のおよそ3分の2もの量を占めています。
その主な役割は、私たちの生命活動の源でもある細胞活動に利用され、エネルギー産生や身体の免疫機能などを司る抗酸化酵素の産生、さらに細胞が新しく生まれ変わるための新陳代謝になくてはならない水分です。
そして、残り約3分の1の体内水分にあたる細胞外液は、体内を巡る血液やリンパ液、細胞と細胞の間を浸す間質液として各種さまざまな役割を担っています。
たとえば、全身をくまなく巡る血液の多くを細胞外液が占めています。ご存知のとおり、血液は全身の細胞に酸素や栄養素を運ぶとともに、細胞の生まれ変わりにおいて発生した老廃物、タンパク質の分解によってできた有害なアンモニアなどを回収する役割があります。
このほかにも、細胞の中でエネルギーがつくり出される時に放出される熱は体温の上昇につながるので、上がり過ぎないように一定に保つ働きもあります。さらに、血流が滞らないように血液濃度の調整を行なうのも細胞外液の役割です。
このように、体内の水分は、私たちのすこやかな生命活動の維持に密に関わっているのです。
水分不足は老化を招く
喉が渇く、それは体内の水分が不足しているSOSサインです。身体から毎日失われていく水分量は性別や年齢など諸説さまざまですが、尿や便の排出、汗、皮膚からの蒸発などで、一日平均1.5リットルから、多い人では2.5リットルといわれています。
だから、身体に必要な水分補給は失われた分とほぼ同量に近い量を補う必要がありますが、食事から摂取する水分や、代謝水といって体内でつくられる水分もあるので、飲料水として摂るべき量は一日に約1.2リットルほどです。
では、もしこの量を補うことができないとどうなるのでしょうか。
たとえば血液中の水分量が減り血液濃度が上昇すると、いわゆるドロドロの状態になり、酸素や栄養素などの運搬や、老廃物や有害物質などの回収能力が落ちてしまい、細胞活動の低下が起こり、すこやかな身体や美容の維持が困難になってしまいます。
また、血管の中に血栓(血の塊)ができやすくなり、動脈硬化などの、深刻な病気を引き起こす原因にもなります。そして、無理な水分制限には注意が必要です。
私たちの身体は加齢とともに体内水分量が低下する傾向にあります。これは、主に細胞内液の減少を意味しますが、細胞活動に利用される水分が不足してしまっては、細胞の若さが失われ、ますます老化のスピードを加速させる要因になります。
さらに細胞がつくり出すSODをはじめ、多くの抗酸化酵素が活発に働くためにも、水分が必要です。「水なくして酵素は働かない」といっても過言ではありません。活性酸素に立ち向かう身体の抗酸化力を高めるためにも、体内の水分不足には十分に気をつけなければいけません。
水分は補給&キープが大切
身体に必要な水分をどんどん摂ればいい? それは違います。身体は常に一定量の水分がキープされ、余分な水分は尿として排泄されてしまいます。さらに、一回の水分補給で身体が吸収できる量は30分間に200ミリリットルくらいといわれています。とくに、喉が渇いたからといって真水をガブ飲みするのは注意が必要です。
体内の水分には、神経細胞や筋肉細胞の働きに関わるなど、身体の働きを正常に保つために必要なカリウム、ナトリウム、カルシウムなどの電解質が多く含まれています。一度にたくさんの水分を補給してしまうと、身体で吸収できなかった余分な水分の排出とともに、この大切な電解質までもが流れ出てしまい、身体の正常な機能が保たれなくなってしまいます。
正しい水分補給とは、喉が渇いたときに一気に補うのではなく、こまめに補給することです。ただし、ジュースはもちろん、スポーツドリンクなどは、大量に飲むと糖質の過剰摂取につながり、生活習慣病や美容トラブルを招く肥満や糖化反応が起こりやすくなるので注意が必要です。日常的な水分補給はミネラルを中心に行ないましょう。