上下逆さまの樹

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BAOBAB(バオバブ)という樹をご存知ですか? 絵や写真で目にしたことがあると思います。
名作「星の王子様」では、根っ子で星を突き刺して壊してしまう悪者として登場しますが、アフリカの大地に樹齢数千年を経て聳え立つ「世界一古い樹」「地球上最大の樹木」です。

BAOBABは、巨大で奇妙な形からUpside-down tree(上下逆さまの樹)と呼ばれています。
BAOBABは、スレンダーな椰子の木や真っ赤な花を咲かせる火焔樹かえんじゅ、甘い実の生るいちじくが羨ましくて仕方ありません。太っちょの自分と比べては、ため息ばかりついていました。

それを見ていた神様は、怒ってBAOBABを引き抜いて、逆さまに突き刺してしまいました。
「他人と自分を比べて羨んで、無いものねだりしてはいけない。」という訓えなのですね。

BAOBABは植物が育たないサバンナの過酷な環境で、短い雨期に10トンもの水を貯えます。
樹皮、葉、花、種、実、根すべて余すことなく利用され、幹の空洞は住居にもなります。

熟すと樹に生ったまま自然乾燥してパウダー状になる不思議な果肉は、優れた抗酸化力と高い栄養価から「スーパー・フルーツ」として注目され、「Novel food」にも認定されました。

不思議がいっぱい詰まった、地球の生命力の象徴BAOBABは、神秘的な奇跡の樹木です。

しかし、地球環境問題が叫ばれる昨今、BAOBABにもその問題が降りかかっています。
異常気象によりアフリカの降雨量が減り水不足に陥っている中、生きるために水分を求めるゾウがBAOBABを食べてしまうというのです。
もちろん食べられたBAOBABは生きてはいけません。
それだけでなく、宅地開発の影響を受け、切り倒されることも問題となっています。
生物とともに生きてきたBAOBABと今後どのように共存していくのか、問題の声は広がっています。

それでもBAOBABはアフリカを代表する大きな存在。現地の住民はもちろん、観光客など多くの人に親しまれています。

最近では鉢植えでBAOBABを育てられることが広く知られ、日本でも夏の庭先で小さなBAOBABを育てている家を見かけます。
ニナファームジャポンの近くにあるお花屋さんでも、たまにBAOBABの苗木が売っていることがあります。
アフリカの地だけでなく、遠く離れた日本でもBAOBABは人々を魅了し、愛されているのです。