健康維持のパートナー「マイクロバイオータ」後編

健康維持のカギはマイクロバイオータがつくり出す発酵代謝産物=メタボライトにあり

マイクロバイオータは一体どのようにして、私たちの健康に貢献しているのでしょう。その答えは、マイクロバイオータが発酵の最終過程でつくり出す「メタボライト(発酵代謝産物)」にあります。

たとえば、腸内に生息するマイクロバイオータは、主に私たちが摂取した食べ物の栄養素を発酵により代謝することで、健康作用を持つメタボライトをつくり出します。ほかにも、肌に生息するマイクロバイオータは、皮脂や汗などを分解して肌をすこやかに保つメタボライトをつくり出しています。

私たちの身体に生息する多種多様なマイクロバイオータは、その種類によってつくり出すメタボライトの種類や健康作用が大きく異なります。つまり、多種多様なマイクロバイオータを保持するということは、健康や若々しさを維持し続けるために大変重要なことなのです。

近年、マイクロバイオータとそれらがつくり出すメタボライトとの関係、さらにメタボライトの種類によって私たちにもたらされる多くの健康作用が大変注目され、世界中でさまざまな研究が活発に行なわれています。

ミトコンドリアの質を高めるメタボライトの役割

メタボライトは、生命活動を支えるミトコンドリアの質の向上にも大きく貢献しています。

私たちがいつまでも健康で若々しくいられるかどうかは「細胞内に質の高いミトコンドリアがどれだけ多くいるのか」 ということと密接に関係しています。そのカギを握るのが細胞機能の一つ「マイトファジー(ミトコンドリア品質管理システム)」なのです。

マイトファジーは不良ミトコンドリアだけを選択的に分解し、細胞内のミトコンドリア全体の質を向上させる機能です。しかし、加齢などによってマイトファジーが正常に機能しないと、働きの悪い不良ミトコンドリアが細胞内に蓄積され、さまざまな病気の発症や老化の加速につながってしまいます。

そこで重要な役目を担うのが、ミトコンドリアの品質管理に関わるメタボライトなのです。マイトファジーを活性化する関連因子の発現を促し、マイトファジーの正常化に役立っています。

健康な百寿者に見られる腸内マイクロバイオータの多様性

私たちの腸内には、1000種100兆個以上ともいわれる多種多様なマイクロバイオータが生息しています。とくに大腸に多く存在し、健康を支えるさまざまな種類のメタボライトを豊富につくり出しています。

通常、高齢になるにつれてマイクロバイオータの多様性は低下していきます。それに伴い、メタボライトの種類や数も減少し、多くの病気の発症や老化の加速につながります。ところが100歳を超えても健康的な生活を送る百寿者は、若い世代と同様に、非常に多様性のあるマイクロバイオータを保持していることが近年の研究で明らかになりました。腸内マイクロバイオータの多様性を維持することは健康そして、長寿へつながると考えられます。